別ブログもやっております! 50年間の役目を終えた「長岡市厚生会館」! その静かなる有終の日々…
「MOANIN' 長岡市厚生会館」

Friday, September 29, 2006

The high-minded philosophy of architecture in Nagaoka

(26日・火曜日の話)

 建物定期調査の記録係として、市内の料亭に行く。初めて中に入る。
 ここは長岡でも名の通った料亭で、おいそれと私が来れるような場所ではない。建物はうちの事務所が設計して30年ほど前に竣工した物件だ。私はずっと、この建物にいつか行ってみたいと思っていた。

 すこし長くなるけど、竣工当時に事務所の所長(当時。現在は相談役)が建築雑誌に書いた、建物の解説文の一部を引用したい。

「地方の時代における中核都市としての発展やニーズに対応しながら、雪国長岡の伝統的風土をいかに建物に取り入れ、今後の雪国建築のひとつのあり方を表現するかが、料亭 『いまつ』 の最大の設計課題であった。
 その中で、敷地の狭隘さと、料亭の敷地としては景観的に好ましくない周辺環境、過酷な雪の遮断という問題点の解決が必要であった。料亭というイメージからいえば純和風建築が望ましいが、ここではそのような理由から全体をRC造のボックスで覆い、その内部に数奇屋を取り込むこととした。また面積確保の点から建物を3層としたが、エレベーターの使用を避け、ボックス全体を地下1階へ落とすことにより、GLに中間階を取り上下1層を歩くという方法で処理した。
 地階において、敷地の境界いっぱいの擁壁をつくり、建物との間のドライエリアをサンクンガーデンとすることによって地階の閉塞性を解消すると共に、庭園を創出することを図った。このドライエリアは地階に並ぶ小間の両側にとり、廊下側のものは1階までの大きな吹抜けとした。
 このため自然光や外気を直接取り入れることができ、また建物周囲の景観にわずらわされることのない坪庭をつくることができた。」  (『新建築』 81年7月号より)

 「エレベーターの使用を避けるために建物を埋めた」 とも読めるが、そうではない。ポイントを独断的にまとめてみると、
1. 積雪と、よくない景観から守られた料亭を作りたい。
(1-2.要求される機能を敷地に入れると、必然的に建物は3層になってしまう。)
2-1.料亭の数奇屋建築を、コンクリート打放しの箱ですっぽり覆ってしまう。
2-2.それをまるごと1層ぶん地下に埋める。
2-3.コンクリートの箱の地下1階と地上1階をぶち抜いて、吹抜けにする。外気とつながった地下1階に日本庭園をつくり、数奇屋から眺められるようにする。

 1はいわゆるコンセプトで、2以降はそれを建築的にどう解決したかという話だが、以前から私が感心していたのは、まずこの建築的な解決方法がまことに独創的であるということ。地下に埋められたことにより周囲に影響をうけない環境が生まれる。つけ加えると、解決の手つきが非常にあざやかで力強くて、一種暴力的ですらある。というのは、この料亭を道路から見ると、和風の立派な門構えと植栽が茂ったアプローチの奥には、本当にそっけない四角のコンクリート打放しのボリュームが 「どっすん」 と見えるだけなのだ。でも実は、その地面の中には本格的な数奇屋と、滝や池までそなえた庭園がある。地下にメインの庭があるなんて、本当に独創的だ。
 そしてあざやかな建築的手法により、1のコンセプトがあたらめて浮かびあがってくる。建築がコンセプトを強化し、コンセプトが建築に背骨を与えている。こうなるとコンセプトというより 『理念』 と呼びたくなる。理念から建築までが一本のライン上にあり、ぶれがない。私もかくありたい、と強く思う。
 この当時のうちの事務所の作品には、こういった理念が感じられて、なおかつ建築の解決方法が非常にチャレンジングなものが数多くあり、私は本当にそれらを尊敬する。おぼろげながらそれを感じたから、私はこの事務所にアプローチしたのだ。

 さて、料亭の建物だが、実際行ってみると、数奇屋空間の質の高さに非常に驚かされた。あわただしい調査の合間にざっと眺めた程度だが、まったく本格的だった。無垢の材料を大きく面的に、かつ厚みを生かして使っていて、あまり余計な線がないモダンな数奇屋で、吉田五十八の空間に強く通じるものがあった。(お金もすごくかけられた仕事のようだ。)
 またおかみさんはじめ従業員の皆さんも格式が高く、プロフェッショナルだった。午前も早いというのに玄関は雑巾で拭き清められ、活け花など季節のしつらえも完璧、お香でも焚いているのか建物全体に香木のような上品な香りがただよっていた。
 長岡にもこれほどの空間があったのか、という驚きが一番の感想だ。私がお客として行ける日が来るのかどうかわからないが、今度は地下の障子を開け放って、地下に作られた雁木ごしに庭の滝を眺めながら、料理をいただいてみたい。

 調査の合間に1枚だけ撮った、自分のための写真。
 露出が飛んでわかりづらいが、数奇屋がコンクリートボックスに収められている。角度が振られた美しいアプローチも、こころにくい。


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I like architectures those are designed with high-minded philosophies like "Ryoutei-IMATSU" in Nagaoka and I want to design my architectures with storong philosophies, but maybe it's a hard way to go.


...Modinha...