今回の旅では、以前より興味があった国内の場所を、できるだけたくさん回ろうと考えていました。
宮内(新潟県長岡市)を出発してまず最初に向かう土地は、福島県の会津美里町にしようと思っていました。
1年半ほど前、福島市で、会津出身で設計をやっているMK君という人と知り合いました。
とても面白い人物でしたが、彼と話していて、「会津で良い空間はどこだと思う?」 と聞くと、「それは、会津美里町にある、左下観音(さくだりかんのん)の御堂ですね。」 と答えてくれました。
(余談ですが、僕が過去に知り合ってきた会津の人って、
とても個性的で芯の強い人物が多いような気がします。
ね、長岡造形大出身のmitto君。 笑)
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【2010年7月24日(土)】
「青春18きっぷ」 を片手に宮内を出発し、JR磐越西線で会津若松に向かい、会津鉄道に乗り換え、芦ノ牧温泉駅で下車しました。
そこから、目指す左下観音まで、歩いて向かいました。
地形図を手に、途中の集落に立ち寄ったりしながら、5kmほど歩いたでしょうか。
御堂の案内看板に従い、さらに山道を登っていくと突如、目指す左下観音堂が、眼前に見えてきました。
MK君の話によると、「まず、ナナメから御堂に近づいていくのがシビれます」 との事。それは実物を見ると、とてもうなずけました。
斜面に寄り添った 「懸造り」 の御堂です。
御堂のフロアレベルは全部で3層あり、一番上がアプローチ階となっています。そこまでは、横の斜面の石段を登って辿り着くこととなります。
記憶から起こしたスケッチなので細部は正確ではありませんが、上図のような構成となっています。
最上階からの、眼下の美里町の眺めは、まさに絶景でした。
建物内部には狭くて急な内階段が設けられており、下層に下りていくことができます。
僕は時間をかけて、各層を登り下りしたりなどして、過ごしてみました。
↓現地で採ったプランのスケッチです。きっちり採寸はしていないので、目安と捉えてください。
全て等スパンで描いていますが、実際には各スパンで間隔が変わっています。写真と見比べると分かっていただけるはずです。方位はうっかり見忘れていました。
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この建物は、岩場の地形を巧みに取り込み、柱だけでなくスラブの束や大引の支持体としても岩を貪欲に利用しています。建物が岩にまるで寄生するかの様子が、プランにも表れています。
僕がこの建物から受けた感銘ポイントは、岩場に懸造りの御堂を建てることで、「メリハリが必然的に生れている」 ことです。
「メリハリ」 とは、開口部と壁、光と影、急な階段を登り下りせざるを得ない身体性、などを指します。
また、水子地蔵のための小さな洞窟があったりと、宗教建築らしい 「巡礼性」 と言いますか、シークエンスの場面の豊富さが、大きくない御堂とそのランドスケープに実現されていました。
さらに、岩の存在感や、懸造りという形式から、「必然性」 というものについて、意識したり考えたりせざるを得ないように感じました。
他にも素材のこと…たぶん無塗装で、かつあまり刃物による平滑な仕上げをされていない木が、ほとんど単一の素材として使われていることなど…たいへん刺激的な建物の体験でした。薦められただけのことは充分ありました。
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