もうそろそろ、すぐれた実物の建築が見たくなった。今週は1日しか休みが無いが、OLさんのように 「自分にご褒美」 みたいな感じで、少しムリして、日帰りで金沢に行くことにした。
兼六園の隣の 『成巽閣』 に、すごい空間があるらしい。
長岡から特急で3時間、金沢に着いた。
金沢をちゃんと訪れるのは1年ぶり・2回目。でも短時間なら、電車の待ち時間にしばらく街を歩いたり、たびたび来ている。高3のとき大学受験でも来た。
金沢駅から武蔵ヶ辻まで歩くとき、僕は一本わきの 「横安江町」 のアーケードをよく通る。
久しぶりで金沢に来てそこに行ってみたら、しばらく場所がわからなかった。アーケードが撤去されていたのだ。
アーケードがなくなり雰囲気がガラッと変わった。ポケットパークが整備され、小型バスが乗り入れてループ運行されているらしい。
上が今回の写真、下は以前撮った写真です。
カフェギャラリーに立ち寄り、シンプルな木の箸置きを買った。店員さんに 「アーケードが無くなったんですね。」 と聞くと、「去年の秋に撤去されました。すごく明るくなりました。」と答えてくれた。地元商店の方々には好評らしい。
ストレンジャーの僕としては、以前の暗めの雰囲気が好きだったっていうことも多少あるけど、でもこれは町づくりの成功例かもね。
さて、今回は日帰りだから、訪ねる建築をピンポイントで絞る。
駅からちょっとした距離を歩いて、成巽閣にたどり着いた。
お目当てのすごい空間というのは、お茶室 「清香軒」 の内路地です。
(絵ハガキをスキャン)
これはまさに 『開いた開口』 ではないか… 日本建築はやっぱりすごいね。
成巽閣は写真撮影禁止で、庭に降りることも禁止されている。だから僕は絵ハガキのように外からのアングルでは内路地を見ていない。清香軒の内側から見せていただいた。
清香軒は特別拝観あつかいで一般の人は入ってこない。拝観を申し出ると、係員さんが錠を開けて案内してくれ、いろいろ説明してくれる。僕が以前に出江寛さんや長岡造形大学の宮澤先生から教わった茶室の基礎知識が役立った。
内路地には (上の写真にはない) 雨戸が一部にはめられていた。雨戸の上部が障子のように紙貼りになっている。開口の位置としては 「雪見」 の逆の状態。
雨戸が開いたところから光が差し、路地はぼんやりと明るく、濡れた石が光っている。すずしい風が通り抜けてきた。
内路地は北陸地方特有のものだけど、遣り水まで引き込んだのは他に例がないそうだ。僕が惹かれたのもまさにそこで、流れをまたいで地面に敷居をまわしてしまう想像力・創造力は、本当にすごいと思う。
聞けばこの敷居は置き敷居で、夏には取り外されたりするらしい。また金沢は積雪がある土地なので、冬は雨戸を閉め切るが、雨戸の紙貼りから光が入り、そして辰巳用水を引き込んだ遣り水は冬でも枯れないそうだ。(清香軒の拝観は11月まで、4月から再開)
絵ハガキほどのフォトジェニックな光景は見れなかったけど、スケール感や空気の感じをしっかりと見届けた。
今日は梅雨の晴れ間の良い天気だったが、案内してくれた係員の女の子は 「雨の日は庭の苔の色がきれいになり、それは普段と本当に違う。私はそちらのほうが好きです。」 と教えてくれた。
成巽閣を出て、兼六園に初めて入ってみた。苔や池の水がきれいだ。このように洗練されていて歴史や文化の厚みが感じられる場所は、新潟にはそんなにない。
疲れたから、茶店で 「あんころもち」 とお茶をたのんで、縁台でいただいた。池の鯉の群れがすごく元気だった。
兼六園を出た後は、当然、『金沢21世紀美術館』 に行く。
ここは1年ぶり2回目だ。1年前のころ、僕は白井晟一の空間性にイカレていたので、21世紀美術館のことは 「真っ白だった」 という感想以外あまりおぼえていない。
でも今は、SANAAが建築を設計していくプロセスにすごく興味があるし、彼らのコンセプトを見出す眼力と、それを突き詰めていく姿勢をすごいと思っている。
今回は美術館の設計の経緯について、雑誌などで調べて予備知識を持ったうえでやって来た。
彼らのコンセプトは、美術館機能と交流機能をひとつにまとめ、円形の屋根をかけて、どこからでもアクセスできる 「広場」 をつくるというもの。
目の当たりにすると、円の直径が100m以上あり巨大なこと・その高さが1層分と低いこと・素材と色が絞られ、カーブガラスの外壁がツライチであることから、彼らがやろうとした 「広場」 が恐ろしく高い抽象度で実現されていると感じた。
展示は 『ゲント現代美術館コレクション展』。ベルギーのゲント市は金沢市と姉妹都市関係にある。
現代美術は、作者が作品に込めた批評精神や社会への主張がわかったときに、すごく面白く感じる。今回いろいろな作品を見て、作者の意図に気づき、それがシニカルかつユーモラスに表現されているので、思わずニヤニヤ笑いが止まらなくなってしまうことがたびたびあった。
また、お客さんも好奇心旺盛な人たちが多く、そしてどの部屋の学芸員さんも作品について熱心に語ってくれて、とても楽しかった。
SANAAの空間の抽象性は非常に高かった。展示室のプロポーションは、キュレイター側の要望から正方形や黄金比を基準に決められている。ある展示室は、平面のタテヨコも壁展開の天井高も、すべて同じ約10mで、こんな空間体験は今までになかなか無かった。
他では味わえない抽象性は、プロポーションに加えて、展示室も廊下も壁は白、床はコンクリート金ゴテ押えのタタキで統一されていることが大きかった。まるで、一度足を踏み入れたらなかなか抜け出せない現代アートの迷宮みたいだ。すごい建築を見せつけられた、という印象が強く残った。
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I visited Kanazawa.
People in Kanazawa were very gentle and kind. In Niigata, my ordinary surroundings, people are cool and unfriendly, if anything. At my office, staffs exchange greetings just in low voices. I realy don't like that.
But people in Kanazawa were very friendly. I was treated warmly by many people - the lady in the information center of Kanazawa Station, the receptionist of Kenroku-En, and the girl who guided me at Seison-Kaku.
I felt like getting back my humanity. It was so good.
...Modinha...
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