バスに乗り換えて、川崎市細山にある 『中村正義の美術館』 に行く。
中村正義は1924年に生まれ、1976年に癌のため亡くなった日本画家だ。現在、ご自宅だった場所が 『中村正義の美術館』 として、ご遺族により運営されている。
中村さんはいちおう日本画家にカテゴライズされているが、その作風は日本画という概念をはるかに超えて多岐に渡っている。また、生涯を通じてたくさんの自画像を描き続けたことでも知られている。
今回、『100枚の顔 展』 として、およそ100点の自画像が一堂に展示されている。
美術館の建物/中村さんの自宅は、篠原一男が1971年に設計した。
建築の世界では、篠原さんの作品として 『直方体の森』 という名前が付けられている。
『中村正義の美術館』 は、孤高のカリスマ建築家・篠原一男 (1925- ) の住宅空間を実際に体験できる数少ない場所である。そしてその空間に中村さんの自画像が100枚も展示されているとあって、僕はすごく期待して訪れた。
ヤンセンや武満の作品で味わったような感覚を、また体験できるのだろうか。
僕がこの美術館に来るのは、3度目か4度目だ。まず初めに訪れて体験をした後、建設当時の篠原さんの言説を読んだり図面を集めたりして、自分の勉強のために模型を作ってみた。
この建築の一番の特徴は、エントランスホールから奥の居間までがまったくの一直線上にあること、そのふたつが巾90cmの細い廊下でつながれていること、そしてその3つの空間がすべて2層分の高さを持つ吹き抜けであることだ。
とても劇的なんだけど、例えば茶室のにじり口や演劇の舞台装置のように、なにかの意味や視覚的効果を演出しようという意図とは、実はまったく無縁の空間である。
それは篠原さんの 「抽象」へと向かう強い志向から来ていると思うんだけど、この空間は個人住宅なのに、まるで古代の神殿のようなきびしさがある。
模型を作ったうえで3度か4度来てみて、今回ようやくスケールや空間の感じの理解が深まってきた。
奥の部屋の2層分の大きな壁には、中村さんの自画像がびっしりと飾られていた。
中村さんのご家族に話を聞くと、このようなかたちで自画像だけを100点も展示するのは初めてだそうだ。
高い抽象性で組み立てられた空間に、自画像だけが架けられている。
もう本当にきびしい神殿か寺院にでも迷い込んだようで、言葉も無かった。
椅子に腰を降ろしてスケッチをした。下手なスケッチだけど、情感や情念のようなものを記録しようとつとめて描いた。
上は僕あてに届いた今回の展覧会の案内をスキャンしたもの。この空間にこれらの絵が飾られている様子を想像してみてください。
------------
I went to The Museum of Masayoshi NAKAMURA. That was designed by Kazuo SHINOHARA as Masayoshi's residence.
I was soaked with those two Great Person's strong willpower.
I thought, "Now I have to go back to Nagaoka and fight against myself."
...Modinha...
1 comment:
Greatt read thankyou
Post a Comment