別ブログもやっております! 50年間の役目を終えた「長岡市厚生会館」! その静かなる有終の日々…
「MOANIN' 長岡市厚生会館」

Monday, April 02, 2007

Tokyo once more


 ひと月のあいだに東京行きが3回目ともなると、旅に出る前の期待も薄れ、「行くべきか行かないべきか」 とすごく躊躇してしまう。

 3月31日の土曜日の朝、とにかく部屋を出て始発に乗ってみたが、あいかわらず電車は全部の駅に停まっていくし、旅に付き合ってくれる連れがいるわけじゃないし、もう 「18きっぷ」 なんて見たくもねえや。それでも電車が関東に入ると、天気が良くなり、菜の花や梅が咲いていて心がなごんだ。

 東京はもう桜が満開だった。東京都庭園美術館に行き、『アルフレッド・ウォリス展』 を見た。(これはすごく良かった。) その後は街をたくさん歩いたりしたが、もうどこかの住宅をわざわざ探し歩く気にはならないし、こんなことなら長岡の部屋でスケッチでもしていたほうがよっぽど良かったかな。

 ところが、そんな生半可な気持ちや甘えた考えは、一日の終わりに行った場所で完全に吹っ飛んだ。
 21_21 DESIGN SIGHT 『安藤忠雄 2006年の現場 悪戦苦闘』 展。


 まず21_21デザインサイトの、建物のキレの良さに驚いた。鋭角のプラン、地上と地下をつなぐシークエンスの巧みさと意外性、狙いすまされた光と影の対比。
 ロビーから階段へと導く壁はRC打放しで、厚さ400mmはあろうかというものだが、その密実さ、手が切れそうなピン角、表面の平滑さに圧倒されてしまった。私が比較的よく知っている豊栄の図書館もすごいが、21_21のコンクリートはさらに凄みを感じるような気がする。

 『悪戦苦闘』展は、21_21の設計から竣工までのドキュメントが展示の中心だった。これは息を呑まずにはいられないものだった。
 設計段階ではファーストイメージのスケッチに始まり、所内コンペが開かれ、数々のスタディ模型が繰り返し作られる。(計画が収斂していくにつれ縮尺が大きくなっていく。)
 計画の途中で敷地が変更になり、設計をやり直して基本設計をまとめたところで、さらに施設の運営方法の変更と規模の縮小が決まり、設計は一からやり直し。その度に繰り返されるスタディ、ドローイング。これらのプロセスがつぶさに展示されていた。不利な条件を飲み込んで、計画案がどんどん切れ味を増していくのが印象的だった。

 工事が着工し、現場では配筋が組まれていく。21_21の現場では、「自分は日本一の鉄筋工だ」 という誇りを持った凄腕の職人が作業にあたったそうだ。等間隔に組まれた鉄筋は独特の美しささえ持ち、今回の展覧会のひとつのシンボルになっていて、配筋現場の俯瞰写真は大きなイメージで扱われ、配筋そのものが展示室のひとつの壁いっぱいに再現製作されていた。
 だがその美しい配筋も、コンクリートが打設されると、外からは見えないものになってしまう。見えなくなる鉄筋を美しく組まないと、長持ちするコンクリートはできない。見えない場所にこそ手を抜かないのが重要である。

 型枠をはずすまでは出来がわからないコンクリートが、細心の注意を払われながら流し込まれていく。コンクリートが打ちあがってからは、今回の計画で安藤さんが、三宅一生さんのA-POCなどの「一枚の布」 という概念からインスパイアされたという、「一枚の鉄板」 で作られた屋根をかけていく。長さ54メートルもの鉄板の屋根はどうやって施工するか。水切りの形状はどうするか。問題を解決していった設計者と施工者の苦労と努力が、現場写真やモックアップにより展示されていた。
 展覧会のカタログは、これらがすべて記録された迫力あるビジュアルブックだった。私はそれを買って、宿に持って帰った。

 宿ではカタログを読んで過ごした。日曜日はもう一度、21_21の展示を見に行こうと思った。
 日曜の朝になり、テレビをつけると偶然、21_21を舞台にした番組を放送していた。安藤さんと三宅一生さんと深澤直人さんが対談をしていた。三宅さんの 「すぐれた建築はこちらの気分を変えてくれる」 という言葉や、安藤さんの 「無我夢中で仕事をやれるかどうか、その緊張感を持ち続けることが大切」 という言葉が印象的だった。

 21_21に行った。昼間の光で見る建築は、前日の夜に見たときとまた違った切れ味を持っていた。開館時間の直後に入館すると、そこには安藤さん本人がいた。
 ギャラリートークをされるというので、地下のギャラリーに行った。大勢の聴衆に囲まれて、安藤さんは生き生きと話をされた。聴衆は安藤さんの話にうなずき、ときに笑い、安藤さんの話に引き込まれていった。地球温暖化への懸念と、この冬の小雪による危機的な水不足の心配についても話をされていた。

 ここで安藤さんはいったん退席され、聴衆は展示室に移動した。私は買ったカタログを片手に、前日よりもつぶさに展示を見ていった。
 数十分ほどして、安藤さんが再び現れた。時間が許す限り、質問タイムを取ってくれるという。私は一番に手を挙げて質問した。
 私は昨日から感じたことを聞いてみた。私は新潟から来て、豊栄の図書館の素晴らしさを知っているが、この21_21はさらに凄みがあるように感じる。安藤さんは日本の色々な地域で現場の違いを感じることはありますか。私のすぐ目の前の安藤さんは答えてくれた。次のような話をしてくれたと記憶している。

 ・・・以前は日本のどの地方に行っても、かならずその地域に良い職人がいたが、その状況をこれからも期待するのは難しくなっていくのかもしれない。しかし良い建築をつくるためには、良い職人と、そしてすぐれた現場監督が不可欠である。21_21の現場では、「俺は日本一」 という誇り高き職人と、津山さんというたいへん仕事熱心で優秀な現場監督がいたから、困難を乗り越えた仕事ができた。
 いま 「美しい国」 というキャッチフレーズを誰もが口にするが、「誰が美しい国をつくるのか」 ということは誰も言わない。美しい国をつくるのは、現場の職人や技術者の施工チームである。
 日本の職人や技術者の優秀さは世界に誇るべきものであり、これは失われてはならない。これがこの展覧会のテーマである。展覧会を見に来る人には、展示物や再現された配筋を見ることで、それを感じて欲しい。


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I watched Tadao Ando Construction Site 2006 “A Hard-Fought Process”.
That was marvelous. I was shamed myself. I have to do something.


...Modinha...

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