別ブログもやっております! 50年間の役目を終えた「長岡市厚生会館」! その静かなる有終の日々…
「MOANIN' 長岡市厚生会館」

Thursday, May 24, 2007

Going roundly


●5月12日 土曜日
 この日は一日で東京と新潟を行き来して、ふたつのイベントに参加した。そんな行動はそれなりにお金もかかったし時間の使い方としてもムダが多いし、ある意味ぜいたくが過ぎたが、両方とも逃したくないイベントだったから、往復で約600kmを移動してきた。


 イベントのひとつめは、東京都立川市での 『ふじようちえん』 の内覧会。そしてもうひとつは 「建築と都市を考える会」 の活動で、新潟県見附市の 『今町』 を 「まち歩き」 したあと、秋のグループ展について話し合うこと。


 『ふじようちえん』 はスタートから完成までのいきさつが面白くて、また建築単体としてもかなり考えられていて興味深かった。どちらについても建築雑誌の 『GA JAPAN』 や 『新建築』 の記事を読むとよくわかる。けど 「そんなの読んでいられない」 というカタギの人のために、しばらく説明してみます(長いよ。)


 『ふじようちえん』 の言い出しっぺは佐藤可士和さんで、「幼稚園みたいな分野にデザインの手を入れてみたい」 とNHK番組トップランナーで発言したところ、それをたまたま見ていた幼稚園業界大手の会社 「ジャクエツ」 が可士和さんに連絡を取り、藤幼稚園の加藤積一園長に引き会わせた。


 老朽化した既存園舎の建て替えを考えていた加藤園長は、すでに別の設計会社に相談して図面まで出来ていたが、けっきょく納得いかずキャンセルしていたらしい。と言うのは、既存園舎はボロいけど、子供たちにはとてもいい雰囲気で、その良さをを引き継ぐ計画にどうしてもならなかったようだ。そうこうしているところに可士和さんとの出会いがあった。


 可士和さんは園長さんに既存園舎を案内された。園長さんは 「ここには土と木と風しかない」 と語ったが、可士和さんは、まさにその三つこそがこの幼稚園の魅力なのではと思った。これは子供のための環境の原点のようなものだから、ふつうの幼稚園のように遊具があふれている必要はない。「園舎そのものを巨大な遊具にする」 というコンセプトが生まれた。


 そのコンセプトのもとで可士和さんと園長さんの話し合いが続くうち、「手塚貴晴・由比夫妻が設計した 『屋根の家』 みたいな園舎ができたらいいんじゃないだろうか」 ということになった。園長さんと可士和さんは手塚夫妻にアポイントメントを取り、「500人の園児のための 『屋根の家』 をつくってほしい」 と依頼した。


 依頼を受けた手塚さんは、自分の子育ての経験から、子供がぐるぐると走り回れる幼稚園を目指してスタディを重ねた。既存の樹木を残して建物が木々のあいだを縫う案など色々な案が出てきたが、なかなかイメージと合わなかった。


 あるとき、「ぐるぐる走り回る」 ということを、そのままシンプルに楕円形の平面にするというアイディアが浮かんだ。敷地図にトレーシングペーパーが重ねられ、フリーハンドで、ゆがんだドーナツ型の平面図が描かれた。ドーナツの屋根にはウッドデッキが張られ、既存樹木の一部は建物と重なり、屋根を突き抜けてそのまま生えることとなる。


 巨大なドーナツの内部は基本的に巨大なワンルームだが、領域を区切る必要がある。手塚さんでさえ最初は保育室どうしの間には壁が必要だろうと考えた。しかし可士和さんが 「普通に壁を立てたら、つまらないよね。」 と発言した。クリエイティブ・ディレクターとして、建築の慣習にとらわれることなく、ふじようちえんの本質をみなに再確認させるための発言だった。保育室どうしは桐の箱を積んで、ゆるやかに仕切られることになった。


 園児のための様々なディテールが考案された。屋根の上の手すり、透明アクリル製のガーゴイル (樋から落ちる雨水の流れが園児に見えるため)、泥で詰まらない外水栓、すべて開け放せる木製引き戸、園児がひもを引っ張ることで点灯する裸電球の照明。
 床には無垢の木が張られ、冬期は床暖房が入る。床と外の地面はほとんどフラットで、特別な昇降口はなく、園児は好きなところから靴を脱いで上りこめる。


 構造設計は池田昌弘さん。池田さんは、工期が二期に分かれること (旧園舎を使いながら新しい園舎を半分ずつ作る) と、既存樹木の根を傷めないことを解決する構造を設計した。建物の架構は三角形トラスを組み合わせた平面で、たとえどこで切ったとしても成立し、柱の配置の自由度も高い。基礎は、大きな梁で固めることはせず、小さなコンクリートの円筒が集まって床を支える。



 ・・・といったことを予習して、立川に向かったわけです。


 そして、これより以前に、建設中のふじようちえんの写真のスライドショーを見る機会があった。
 ふじようちえんの床材を納品したのは、新潟県見附市の上野住宅建材株式会社さんである。 「建築と都市を考える会」 の集まりにおいて、社員の渡辺さんが写真を見せてくださった。そのとき一緒に見ていた会員の反応からは、特に木の引き戸に関して 「こんなディテールで本当にだいじょうぶなのか」 といった疑問の声もあった。
 というわけで、私は自分の目で確かめてこようと思った。


 立川市に着き、最寄駅からふじようちえんまでしばらく歩いた。歩いたので土地のコンテクストがよく理解できた。(農地や玉川上水など)
 ようちえんの入り口で記帳して入園した。↓


 ようちえんの感想は、とにかく明快で、おおらかな建物だった。引き戸は開け放され、建物を風が吹き抜けていた。敷地の真ん中に大きなドーナツ型のボリュームが置かれているわけだが、建物の風通しがいいので、中庭と建物と外側の庭が、つながっているんだけど区別されているような、面白い関係だった。↓


 この日は園児の姿は無かったが、見学者がとても多く、それが普段園児でにぎわう様子を連想させて良かった。これだけの人数がひとつの建築に同時に居て、それぞれが好き好きに靴を脱いだり履いたり、内部に出入りしたり屋根に登ったりしているのは、すごく不思議な体験だった。喜多方のアレを思い出すね。
 内部床と同じ広さの屋根デッキが浮かんでいるというのも、なんとも不思議。(屋根デッキの後ろに見える三角屋根は、別棟の給食厨房)↓


 問題の木建具は、開け放しだったので断熱性能はわからないが、上部2点のローラーで吊られていて、曲線レールを走るアクションはスムースだった。敷居にどうしても砂ぼこりが入るが、開閉に問題はない。↓



 ↓外部のディテール。デッキ手すり、軒樋 (落ち葉対策で幅広)、透明ガーゴイル、雨水受けと外水栓。
 手すり子のピッチは約110mmで、園児が軒に座ったとき、足は通せるが頭は通らない寸法。


 手塚さんと加藤園長によるレクチャー・オン・ザ・ルーフトップがあった。↓


 園長先生が 「ここでは子供たちに、靴を脱いだらそろえるとか、扉を開けたら閉めるとか、 電球のともる仕組みとか、『あたり前のこととは何か』 を教えることができて、それがとても重要。」 というような話をされていたのが印象的だった。想像するに、たぶん汚れやすい床はみんなで雑巾をかけるんだろう。


 この建物は明快でシンプルで、質実剛健ですごく健康で、私はホームランを打たれたピッチャーのような気分になった。凝りに凝った素材使いやディテールはまったく無いが、それでもあの場は特別だった・・・でも普通なんだよな。普通だけど特別。
 しかしそこにたどり着くまでにどれほど設計を詰めていったか、現場の努力がどれほどだったか、想像にあまりある。(子供のための) 空間の本質を抽象し、普遍性を高めていった先の到達点がどれほどのものなのか、今回経験させていただいた。


 さらにその過程で、園長先生と佐藤可士和さんが果たした役割についても色々と考えた。目先の問題を解決していくのはもちろん大切だが、全体のビジョンを持つ人、コンセプトをブレさせない役割を持つ人 (可士和さん) の存在が、プロジェクトに大きな影響を与えることがわかった。
 また、良い建築には良い施主が絶対に必要である。ふじようちえんの出発点は加藤園長の思いであり、それを建設チームが育てて芽吹かせたと言える。
 現地でもらった手づくりパンフレットより↓


 ・・・立川から新幹線経由で取って返し、見附へ向かう。見附駅からバスに乗って今町へ。「建築と都市を考える会」 に合流し、まち歩きに途中から参加する。今町の入り組んだ路地を散策する・・・と言うか彷徨する。
 妻入りの街並みは中越地方の特徴である。


 まち歩きの後は、上野住建さんの会議室をお借りして、グループ展の話し合いをした。会場を貸していただいた社員の渡辺さんに、ふじようちえんの内覧会に行ってきたことを報告した。
 今町のおいしいおまんじゅうを食べながら、グループ展のアイディア出しをした。まち歩きをふくめて、秋に向けて活動がどう実っていくか、楽しみである。


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I went to Tachikawa, Tokyo to visit a kindergarten named Fuji Youchien.
That was designed by Takaharu and Yui TEZUKA. It was a huge architecture and it had an oval shape and a big courtyard. (It was like a big doughnut.)
As kindergarten, it was very simple and clear. There was no particular gears but it was a very good architecture for children. I guess it is not easy to develop the design as simple and clear as like Fuji Youchien.


...Modinha...

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